知らなきゃ大損?就職促進給付でお得に再就職しよう!

失業して基本手当をもらいながら求職中。
早く再就職したいけど、まだもらえるはずの基本手当が打ち切られるのは損だよな~

いえいえ、そんなことはありません。
失業中に利用できる「就職促進給付」の中に、再就職するともらえる手当があるんですよ!
「就職促進給付」には、他にも、面談や訓練のために遠出する時の手当や、子どもを預ける費用を補助してくれる手当もあります!
あまりよく知られていないこの「就職促進給付」、丁寧に説明していきます。
目次
就職促進給付とは?
仕事を失った時ハローワークで手続きをすれば、基本手当、いわゆる失業保険をもらえるというのはよく知られていますね。
では、就職が決まった後に支給される「就業促進手当」という手当があるのをご存知ですか?
早期の再就職を応援する「就職促進給付」の一つです。
「就職促進給付」には、ほかに、再就職にあたって引越しが必要な場合に支給される「移転費」というものもあります。
また、遠方の求人事業所に行くための交通費、短期訓練の受講費の一部、保育料の補助などを出してくれる「求職活動支援費」もあります。
「就職促進給付」の一覧は以下のとおりです。
それぞれの内容や受給要件などを解説していきます。
再就職したらもらえる「就業促進手当」
「せっかく失業手当がもらえるのだから、給付期間終了までは無職でいいや。」
…失業期間中そういった思いが頭をよぎることがあるかもしれませんね。
確かに、失業手当の基本手当は、就業していなくてもお金がもらえるという点でとても魅力的です。
しかし、だからと言って、就職を先延ばしにしてしまっては本末転倒。
基本手当はあくまでも次の就職までの間をつなぐ一時的な支援です。
基本手当に頼りすぎることなく、早めの復職を促進したい――そのために設けられているのが「就業促進手当」です。
「就職促進給付」とよく似た名前ですが、「就職促進給付」の中の一つです。
基本手当の所定給付日数を残した状態で再就職した場合、ある一定の条件を満たしていれば、残りの基本手当の一部が支給されるという制度です。
一部支給のため額は基本手当よりも少ないですが、一括で支給されるというメリットもあります。
新しく就いた仕事の形態などにより、以下の4つの手当があります。
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
(1)一年を超えて勤務するなら「再就職手当」
一年を超えて勤務する場合は「再就職手当」をもらうことができます。
支給額の計算式が2種類あり、基本手当の所定給付日数がどれだけ残っているかによって支給額が変わります。
所定給付日数残り2/3以上:残りの所定給付日数×60%×基本手当日額
所定給付日数残り1/3以上2/3未満:残りの所定給付日数×50%×基本手当日額
2つの計算式を見比べると、残りの所定給付日数が多い方が支給率が高いことが分かりますね。
早めに再就職をすればそれだけ給付額が増えるということです。
どのくらいの差があるかも含め、受給額例を見てみましょう。
35歳、基本手当日額は5,000円をもらっていると仮定します。
基本手当の所定給付日数は90日としましょう。
支給残日数が61日の場合は
61(日)×60%×5,000(円)=183,000円
支給残日数が59日の場合は
59(日)×50%×5,000(円)=147,500円
となります。
支給率が10%異なるため、たった2日の違いでも額にかなり開きが出てしまいます。
再就職手当をもらうつもりでいるならば、支給残日数を気にしながら、1日でも早めの復職を果たした方がよさそうです。
受けられる条件は?
再就職手当を受けるためには、以下の要件全てを満たしている必要があります。
- 受給手続き後、7日間の待機期間を終了していること
(待機期間中に就職してしまうともらえません。内定のみならOKです。) - 就職日の前日までの失業の認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が残り1/3以上あること
- 離職した前の職場に再就職したものでないこと(関連会社も含む)
- 離職理由により給付制限がある場合は、待機期間終了後1か月はハローワーク職業紹介事業者からの紹介による再就職であること。
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 雇用保険の被保険者であること
- 過去3年間に再就職手当または常用就職支度手当を受給したことがないこと
- 受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
受給要件を満たしているかどうかについては、不安な場合は必ず早めにハローワークに確認しましょう。
パート、アルバイトでももらえるの?
正社員で再就職を果たすことができるとは限りませんよね。
パートやアルバイトで復職したとしても、再就職手当はもらえるのでしょうか?
答えはYESです。
前述の要件をすべて満たしていれば、雇用形態問わず再就職手当は支給されます。
ただし、パートやアルバイトで勤務する場合、「1年以上の雇用が見込めること」を職場側に書類で証明してもらう必要があります。
職場としても保証できない場合は断られてしまうかもしれないので注意しましょう。
また、「再就職先で雇用保険に加入していること」も、パート・アルバイトで働く日数や時間によっては満たすことができない要件になります。
いざ再就職が決まってから、再就職手当の受給要件を満たせないことが分かった…などということを避けるためには、面接時にしっかり確認することです。
担当者には、再就職手当を受け取る意向がある旨を伝え、要件を満たしてもらえるのかしっかり確認しておきましょう。
(2)前の賃金との差額を埋めてくれる「就業促進定着手当」
再就職できて一安心したものの、前職より給料が下がってしまって生活がきつい…ということはよくあります。
異業種への転職だったりすればなおのことですね。
そんな時に収入を補ってくれるのが、「就業促進定着手当」です。
これは、再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合に受け取れるものです。
転職前の給料との差額を6か月間にわたり、国が補填してくれるのです。
スタートしたのが平成26年4月と新しく、まだ知らない人も多いかもしれませんね。
じっくり解説していきましょう。
支給対象者は?
平成26年4月1日以降の再就職で、以下の条件をすべて満たしている人が対象です。
- 再就職手当の支給を受けていること
- 再就職の日から同じ企業に6か月以上、雇用保険の被保険者として雇用
- 所定の算出方法による再就職後6か月間の賃金の1日分が、離職前の賃金日額を下回ること
どれくらいもらえるの?
支給金額の計算方法は以下の計算式で行います。
就業促進定着手当=(①離職前の賃金日額-②再就職後6か月間の賃金1日分の額)×③再就職後6か月間の賃金支払いの基礎となっている日数
①の「離職前の賃金日額」(=前の賃金)は、「雇用保険受給資格者証」の「14.離職時賃金日額」に記載されています。
上限額と下限額があります。
②の「再就職後6か月間の賃金1日分の額」(=今の賃金)については、「月給制の場合」と「日給・時給制の場合」によって異なります。
月給制の場合は、「再就職後6か月間の合計賃金額÷180日」です。
日給制・時給制の場合は、
- 再就職後6か月間の合計賃金額÷180日
- (再就職後6か月間の合計賃金額÷賃金支払算定基礎となる日数)×70%
のいずれか高い方が適用されます。
③の「再就職後6か月間の賃金支払の基礎となっている日数」(=6ヶ月に関しては、「月給制の場合」「日給月給制の場合(※)」「日給制・時給制の場合」の3つに分けて考えます。
(※)日給月給制というのは、一日を計算単位として算出された給料を毎月1回まとめて支払う制度です。
- 月給制の場合:暦日(31日の月なら31日、30日の月なら30日)
- 日給月給制の場合:賃金支払の基礎となる日数
- 日給制・時給制の場合:実際に働いた日
が、それぞれ適用されます。
▶就業促進定着手当には上限額があります
それでは、前の賃金との差額を日数分必ずもらえるかというと、ちがいます。
就業促進定着手当には上限額があるのです。
計算式は、「基本手当日額×支給残日数×40%」です。
基本手当日額には上限額の設定もありますので、思ったほどもらえないなということもあるかも知れませんが、やはり前の給料との差を埋めてくれるというのは助かりますよね。
特に1年遅れで請求される住民税などで頭を悩ます心配が減りそうですね。
ぜひ有効活用しましょう。
(3)一年未満の雇用なら「就業手当」
再就職手当では、「1年以上の雇用が見込まれること」という要件を満たす必要がありましたが、「就業手当」は1年未満の雇用の場合にもらえる手当です。
正社員で再就職できた場合は問題ないでしょうが、パートやアルバイトなどで再就職した場合、1年以上の雇用を約束してもらえないケースもありますよね。
就業手当なら、下の要件を満たしていれば支給を受けることができます。
- 基本手当の支給残日数が45日以上、また所定給付日数の3分の1以上あること
- 離職前に働いていた事業主(関連事業主含む)に再雇用されたものでないこと
- 求職申し込み以前に、雇入れの約束を交わしたものでないこと
- 待期期間(7日間)が経過していること
- 給付制限がある場合、待期期間満了後1ヶ月の期間内については、公共職業安定所の紹介により職業に就いたものであること
支給額の計算式は「基本手当日額×支給日数×30%」です。
就業促進定着手当よりさらに少ないですね。
早期再就職して就業手当を受給するか、基本手当を期限いっぱいまで受給するかは、それぞれ置かれた状況により判断しましょう。
(4)転職活動が長期化しがちな人のための「常用就職支度手当」
再就職手当や就業手当では、基本手当の支給残日数が1/3以上あることが受給要件になっています。
このため中高年や障がいのある人など、転職活動が長期化しがちな人たちは再就職手当を受給するのが難しいという問題がありました。
そこで制定されたのが「常用就職支度手当」です。
- 障害を持っている、もしくは再就職した時の年齢が45歳以上であること
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3未満、または45日未満であること
- 再就職手当の受給要件を満たしていないこと
- ハローワークや職業紹介事業者の紹介による再就職であること
- 待機期間及び受給制限期間後の再就職であること
- 1年以上の雇用が見込まれること
- 離職前の事業主に雇用されていないこと
- 再就職日から遡って3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を支給されていないこと
以上の要件を満たす場合に支給を受けることができます。
いくらもらえるの?
常用就職支度手当の支給額の計算式は「基本手当日額×40%×支給残日数(上限90日)」です。
支給残日数については、45日未満の場合は全て45日とみなして計算します。
つまり、支給残日数がたった1日だったとしても、45日分もらえるということです。
これは大きなメリットですね。
再就職のために引っ越すなら「移転費」がもらえる!
再就職に際して引っ越し費用まで出ることをご存知でしたか?
「移転費」は再就職に伴い転居が必要と判断された場合、一定の要件を満たしていると支給される手当です。
受給要件は、
- 雇用保険の受給資格者であること
- ハローワークが紹介した職業に就くため、住所・居所を変更すること
- 通勤時間が長い(往復4時間以上)、交通の便が悪い、事業所の特殊性や事業主の要求によりハローワークが住所・居所の変更が必要であると認めていること
- 1年以上の雇用が見込まれること
となっています。
何の費用を出してもらえるの?
移転費には、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、移転料、着後手当の6種類があります。
▶鉄道費・船賃・航空賃・車賃
移転費の支給要件を満たす本人と随伴する親族について、その旧居住地から新居住地までの区間の移動にかかる費用が支給されます。
▶移転料
いわゆる引越代です。
移動距離、随伴する家族の有無などに応じて支給されます。
▶着後手当
着後の諸費用として、親族を随伴する場合76,000円、単身の場合38,000円が支給されます。
支給を受ける前にやること
移転の日の翌日から数えて1か月以内に、管轄のハローワークの所長に、移転費支給申請書に受給資格者証などを添えて提出します。
支給を受けた後にやること
支給を受けた後、移転したらすぐ就職先の事業主に「移転費支給決定書」を提出します。
就職先の事業主は、その移転費支給決定書に基づいて「移転証明書」を作成し、移転費を支給したハローワークの所長に送付します。
求職活動に必要な諸費用をカバーする「求職活動支援費」
「求職活動支援費」は、その名のとおり、求職活動をさまざまな面から支援するもので、以下の3つがあります。
- 広域求職活動費
- 短期訓練受講費
- 求職活動関係役務利用費
(1)「広域求職活動費」で交通費が支給されます!
求職活動で遠方に行く必要があるときに、その費用を補うため支給されるのが「広域求職活動費」です。
受給要件は以下のとおりです。
- 雇用保険の受給資格者であること
- ハローワークによる紹介求人であること
- 応募先企業が遠方であること
- 待機期間・給付制限が終了していること
- 応募先企業からの援助が広域求職活動費の額に満たないこと
3.の「遠方」というのは、居住地を管轄するハローワークから、訪問する求人事業所の所在地を管轄するハローワークの間の往復の距離が200km以上ある場合です。
広域求職活動費には「交通費」と「宿泊費」の2つの区分があります。
交通費
交通費は基本的に全額支給されます。
ただし最も効率的な移動手段であることを、ハローワークが承認しなければなりません。
宿泊費
居住地を管轄するハローワークから、訪問する求人事業所の所在地を管轄するハローワークの間の往復の距離が400km以上ある場合、宿泊費が支給されます。
宿泊費は地域により異なりますので、所轄のハローワークに確認しましょう。
手続きは?
広域求職活動費の手続きの流れは、交通費・宿泊費ともに次のようになります。
▶1.ハローワークから求人紹介・用紙交付
ハローワークで遠方の求人を紹介された場合、以下2点の用紙が渡されます。
- 広域求職活動指示書
- 広域求職活動面接等訪問証明書
▶2.面接を受ける
紹介された事業所で面接等を受けます。
その際、事業所に「広域求職活動面接等訪問証明書」の事業主証明欄への記載をしてもらいます。
▶3.ハローワークに書類提出
広域求職活動を終了した日の翌日から10日以内に管轄のハローワークに下記の書類を提出します。
- 支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 広域求職活動指示書
- 広域求職活動面接等訪問証明書
(2)「短期訓練受講費」で受講費の一部をもらえる
基本手当等の受給資格者がハローワークの職業指導により再就職のために1ヶ月未満の教育訓練を受け、訓練を終了した場合に、支払った教育訓練経費の2割(上限10万円)が支給される制度です。
似た制度に「教育訓練給付制度」がありますが、「教育訓練給付制度」に下限が設定されているのに対し、この「短期訓練受講費」には下限がありません。
受講前の手続きは?
▶1.「短期訓練受講費支給要件照会票」提出
受給資格があることを確認するため、管轄のハローワークに教育訓練実施者の証明を受けた「短期訓練受講費支給要件照会票」を提出します。
照会票は、ハローワークの雇用保険窓口で受け取ることができます。
▶2.「短期訓練受講費支給要件回答書」の受理
ハローワークから「短期訓練受講費支給要件回答書」が交付されます。
「支給要件を満たしています」と記載されていればOKです。
▶3.ハローワークによる受講指導
ハローワークの職業相談窓口に、2.の「短期訓練受講費支給要件回答書」を持参して受講指導を受けます。
ハローワークでは、教育訓練の受講が再就職のために必要がどうかなどを確認し、「短期訓練受講指導書」を交付します。
受講修了後の手続きは?
「求職活動支援費(短期訓練受講費)支給申請書」に必要書類を添えて、教育訓練の終了日の翌日から1ヶ月以内に管轄のハローワークへ提出します。
(3)ママに朗報!保育料に利用できる「求職活動関係役務利用費」
子どもを抱えての求職活動の場合、面接や教育訓練の受講のために、子どもを預けたりすることが必要になってきますが、仕事に就いていない中で、そのための費用を払うのは結構な負担ですよね。
「求職活動関係役務利用費」は、保育園や幼稚園の保育、一時預かり事業等の保育サービスの費用の一部が支給される制度です。
いくらもらえるの?
保育等サービス利用のために本人が負担した費用の80%(上限額あり)が支給されます。
求人者との面接の場合は15日、教育訓練の場合は60日と、日数の上限があります。
手続きは?
「求職活動支援費(求職活動関係役務利用費)支給申請書」に、以下の書類を添えて、失業認定日にハローワークへ提出します。
- 受給資格者証
- 保育等サービス費用に係る領収書
- 保育等サービス利用証明書(求職活動関係役務利用費)
- 保育サービス利用料の返還金明細書(利用料の値引き等があった場合)
- 【面接を行った場合】事業主の証明を受けた「面接等求職活動証明書(求職活動関係役務利用費)」
- 【教育訓練を受講した場合】訓練実施者の証明を受けた「訓練等受講証明書(求職活動活動役務利用費)」
- 対象となる子の氏名、本人との続柄を確認でできる住民票記載事項証明書
- 【保育等サービス利用費について、地方公共団体等の第三者から補助を受けた場合】その額を証明する書類

今回は、「就職促進給付」について解説しました。
再就職して手当をもらえたり、お給料が下がってしまった時に埋め合わせをしてくれたりと、知らないと大損ですね!
求職活動のための交通費や宿泊費、短期訓練の受講費、保育料の補助など、求職活動を応援する制度もいろいろありますね。
早く希望の仕事に就けるように、ぜひ有効活用しましょう!