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マイクロクレジット~グラミン銀行を例に~ 

みなさんは「マイクロクレジット」という言葉をご存知ですか?

マイクロクレジットは、日本語では少額無担保融資で、その内容は「個人向けに少額のローンを無担保で融資する」ということです。

どのようにしてこのような仕組みが生まれ、どのような人たちに利用されているのでしょうか。

今回は、マイクロクレジットについてグラミン銀行を例にして学んでいきましょう!

マイクロクレジットとは?

「マイクロクレジット」とは「貧しい人々(貧困層)に対し無担保で少額の融資を行う金融サービス」のことです。

この「少額の融資を無担保で行う」という側面だけを見れば、実は日本のカードローンなどに近い形態のサービスと言えるでしょう。

しかし、今回ご説明する「少額無担保融資(マイクロクレジット)」は「貧困層向けの金融サービス」という点に大きな特徴を持っています。

マイクロクレジットはマイクロファイナンスの一部

「マイクロクレジット」について調べてみると「マイクロファイナンス」という言葉も出てきて、少し混乱してしまうかも知れません。

しかし、難しいことはありません。
マイクロファイナンス」は貧困層向けの金融サービスの総称で、マイクロクレジットはその一部なのです。

マイクロファイナンスの主なサービスとしては、マイクロクレジットのほかに、マイクロセービング、マイクロ保険があります。

▶マイクロセービング(預金)

ライフプラン(人生設計)を考える上で、預金は重要な仕組みです。
冠婚葬祭、そして何よりも子供の教育を考えるなら、適切な貯蓄をする必要があります。

日々の生活に追われ「貯蓄」という概念すら持てなかった貧困層に向けた預金サービスが「マイクロセービング」です。

▶マイクロ保険(保険)

自然災害、盗難、病気や戦争…。貧困層は、これらの影響を強く受けます。
こういったリスクから身を守る術として「保険」があります。

けれども、貧しくて保険に入れなかったり、保険に入るという発想がなかったりして保険に入っていない人が多く、貧困層の状況は悪化の一途を辿ってしまいます。

このような中、より少ない経済的負担で保険に入る機会を提供するのが「マイクロ保険」です。

援助や支援との違い

貧困層向けというと、援助や支援と考える人も多いと思いますが、マイクロクレジットはあくまでも「融資」です。

援助や支援は自力で貧困から脱却する力を奪ってしまうという面も指摘されますが、その点、「マイクロクレジット」は、あくまでも「融資」であるため「利子を付けてきちんと返済しなければならない」という点が大きな特徴です。

貸す側と借りる側は「サービスを提供する側・サービスを受ける側」という、信用に基づいた対等な関係なのです。

融資を受けた人は、借りたお金を元手にして事業を始めます。

援助や支援ではなく、自らの生産活動を通じて貧困脱却を目指せる点に「マイクロクレジット」の革新性があると言えるでしょう。

従来の相互扶助との違い

「マイクロクレジット」のユニークな点は、無担保・保証人なしで融資可能な点です。

無担保・保証人なしで貧困層にお金を貸し出すのは、リスクがとても高いと思いますよね?
そういった問題を解消するため、「マイクロクレジット」では「5人1組のグループ融資」を採用しています。

これは、誰か1人が返済できなくなったら全員で肩代わりするというような保証人制度ではなく「1人1人の返済を、全員で助け合う」という仕組みです。

実際にグループ内部ではこのような「助け合い」がしっかり機能しています。それは「1人が返済できないと、他のグループ構成員がお金を借りられなくなる」からです。

さて、このような「グループでの経済的な助け合い=相互扶助」は古くから、様々な国で存在していました。しかし、仲間でお金を出し合う相互扶助では、以下のような問題がありました。

  • グループの中でお金を受け取る順番を待たなければならない
  • 貧困層が持ち寄るお金なので全体金額が少ない
  • 天災が起きれば全メンバーが困窮し、その中で助け合うことは不可能
  • せっかく集めたお金を無駄遣いされてしまうこともある

結局、従来の相互扶助では、生活を豊かにすることはできなかったのです。

一方「マイクロクレジット」は、出資者と融資を受けるグループは別なので、上のような問題はなく、必要な時に必要な金額の融資を受けることができるのです。

借り手への丁寧な教育・指導

無担保・保証人なしで貧困層にお金を貸し出すために大切なもう一つのポイントは、借り手が自立していくために、職員が丁寧に教育・指導を行うことです。

お金の使い方や返済の計画について個別にアドバイスするのはとても手間のかかることですが、これが借り手の自立を助け、銀行としても高い返済率を確保することにつながっています。

代表的なマイクロクレジットがグラミン銀行

グラミン銀行とは?

グラミン銀行は直訳すると「”村”銀行」(農村銀行)ということになります。

1983年、ダッカ(バングラデシュの首都)に創設され、主に農村の貧困層に向けた金融サービスを展開してきました。
その代表的なサービスが「マイクロクレジット」です。

ちなみによくある誤解ですが、マイクロファイナンスの元祖はグラミン銀行ではなく、グラミン銀行創設の20年ほど前に米国で設立された「アクシオン」というNPOです。

ただし、アクシオンの融資では保証人あるいは担保が必要なため、「無担保・保証人なしのマイクロクレジット」を展開して広めたのは、やはりグラミン銀行が最初と言えるでしょう。

このような功績がたたえられたグラミン銀行は、現在「ノーベル賞を受賞した唯一の企業」となっています。

ムハマド・ユヌス総裁について

1940年に生まれ、世界で最も注目を浴びる経済学者の1人が、グラミン銀行の創始者であり総裁でもあるムハマド・ユヌス氏です。

ムハマド・ユヌス氏はバングラデシュの生まれですが、米国・ヴァンタービルト大学で経済博士号の学位を取得しています。
金融の先進国で経済を学んだということですね。

さて、従来の銀行は、担保や保証人が用意できる「経済的に問題のない人々」ばかりを相手にしてきましたが、これでは、経済格差はますます拡大してしまいます。

このような中、融資システムの見直しのためにムハマド・ユヌス氏が立ち上げた調査プロジェクトが、グラミン銀行創設へとつながりました。

ムハマド・ユヌス氏は、グラミン銀行とともに、2006年のノーベル平和賞を受賞。彼の打ち立てた、いわゆる「グラミンモデル」は世界中に広がっています。

5人組グループの成功と失敗

グラミン銀行のマイクロクレジットは連帯責任制の5人組グループで行われるということは、すでにお話ししました。

このモデルは、決して楽ではない状況の中で互いに協力することにより融資の計画的・効果的な利用に貢献していると言えるでしょう。

一方で、この5人組グループに、全く問題が無いわけではありません。
その問題点についてまとめました。

▶他のメンバーが肩代わり

マイクロクレジットの連帯責任制では、誰かの返済を肩代わりする必要はない(保証人制度ではない)にも関わらず、実際は誰かが肩代わりするケースもあります。

▶グループ内部が険悪になることも

返済がうまくいかないことで、グループの内部が険悪になったり、コミュニティにひびが入ることもあります。
そうした事態を避けようと、高利の金融機関から新たに借り入れを行うケースもあります。

▶極貧困層はグループに入れない

グループは任意に組まれるので、返す能力があるのか疑わしいと思われる人はグループに入れないのが実情です。
貧困層の中でも特に貧しい人々が救済される機会を逸している、というわけです。

マイクロクレジットの連帯責任制は、前例のない非常に興味深い試みであり、実際に効果を上げるケースも多いものの、問題点もゼロではないと言えるでしょう。

5人組

主な利用者は女性

グラミン銀行では当初から、主な利用者対象者を「女性」にしてきました。実際に利用者の9割以上が女性と言われています。

きっかけは、ユヌス氏が貧しい村の女性たちに個人的にわずかなお金を貸した時の経験です。

彼女たちはユヌス氏から借りたお金でヤミ金業者からの借金を返済した上で、きちんとユヌス氏に借りたお金を返しました。

このことがきっかけで、女性を主なターゲットとした金融システムを始まったのです。

女性は、自分よりも家族のためにお金を貯蓄し、計画的に使う傾向が強く、「女性は貧困問題解決の鍵」と言えます。

グラミン・ユニクロについて

日本の企業がグラミン銀行と関係があることはご存知でしょうか?

グラミン銀行と日本のファーストファッションブランド「ユニクロ」とが提携し、2011年に合弁企業「グラミン・ユニクロ」を設立し、すでに委託販売を拡大しているのです。

委託販売を行うのは、もちろんグラミン銀行の顧客である女性達で、雇用の創出にも一役買っています。こうした試みをおこなう日本企業が今後増えてくるかも知れませんね。

マイクロクレジットの課題・問題点は?

少額の融資で貧しい人々の自立を促すことができるという理念で、今やマイクロクレジットは世界中に広がっていますが、同時に次のような課題・問題点も指摘されています。

  • 本当に効果が出ている?
  • 類似業者が高利貸し化している
  • 連帯責任性の負担が大きい
  • 生活費のための借金になってしまっている

一つ一つ解説していきます。

本当に効果が出ている?

理念の崇高さ、ビジネスモデルとしての斬新さが多くの賞賛を集める一方で「本当に、貧困に対する効果が出ているの?」という、少し冷静な立場からの懐疑論も出ています。

例えばニューズウィークにおいても、マイクロクレジットの貧困削減効果に疑問を投げかける記事が発表されています。

実際、単純に利用者の所得が増えたからと言っても、それがマイクロクレジットの効果とは限りません。地域や国の経済的発展が反映されただけかも知れないからです。

このように、貧困削減効果についての「確証(データ)や調査」はまだまだ不十分と言えるかもしれませんね。

類似業者が高利貸し化している

実質年利率20.0%のグラミン銀行に対して、「マイクロクレジット」を名乗る類似業者が存在します。

彼らはグラミン銀行の理念とは異なる高利貸しで、その実質年利率は、グラミン銀行の5倍以上にものぼると言うことです。
簡潔に言えば、融資の目的が「貧困層から搾取すること」になっているわけです。

日本でも、グループ企業に扮するために、有名企業や大手消費者金融に近い名称をつけるヤミ金業者が多く登場したことがあります。
「類似業者の高利貸し化」はこれに似た現象とも言えるでしょう。

連帯責任制の負担が大きい

マイクロクレジットを名乗る高金利な類似業者から、わざわざお金を借りるなんていうことは、通常では考えにくいですよね。

しかし、5人組グループの他のメンバーに迷惑をかけないように無理にでも返済しようと、やむなくそういった高金利な類似業者に手を出すケースもあるとのことです。

このように、プレッシャーの強い「グループの連帯責任制」に批判的な声も少なくありません。

生活費のための借金になってしまっている

マイクロクレジットは、基本的に貧困脱出のために事業を始める「元手」としての融資が想定されています。

ところが、飲食品や生活雑貨などの購入といった生活費のためにお金を借り、その結果、多重債務に陥っている利用者も存在するようです。

もちろん、当初の理念から逸れずに良い運営がなされているところもあり、今後も試行錯誤しながらも貧困層の自立に役立ち続けていくことが望まれます。

編集部まとめ

今回はマイクロクレジットについて、グラミン銀行を例に、少額の融資によって起業を支援し、貧困から抜け出せるようにしていく仕組みだということを紹介しました。

ただ貸すだけでなく、グループを作ったり、職員が指導したりしていることがポイントなのですね。